特定建築物の定期報告の報告状況等の公表
札幌市、特定建築物の定期報告の報告状況を公表
昨年3月に西区のマンションのひさしが崩落する事故が起きたことを受け、札幌市で特定建築物の定期報告の報告状況が、道内で初めて公表されました。
公表の方法は、札幌市のホームページと定期報告窓口で、特定建築物の「名称」「所在地」「用途区分」「定期報告の有無」の4項目の確認が、誰でも出来るようになりました。
公表されたデータによると、平成29年度対象の特定建築物が3,422棟に対し、未報告が14%にあたる481棟。
共同住宅(マンションなど)は区によって報告年度が分かれており、今回公表された平成29年度の対象は中央区、手稲区、西区の3区。
対象の2,637棟に対し、13%の347棟が未報告となっています。
宮の沢ハイツの事故で大きく取り上げられ、さらに今回の公表は昨年から発表されていました。
また、公表について文書で所有者へ通知も送付されていたのに、それでも定期報告を行っていない共同住宅が3区だけで347棟もあることに驚きを隠せません。
建物オーナーの本音
今回の公表によって北工房へのお問い合わせが増えていますが、「調査にいくらかかるのか」といった調査費用の見積もりの依頼がほとんどです。
残念な事に、今回公表された物件の中にも、いくつか過去に見積もりを出した物件が「未報告」となっていました…。
調査費用や修繕積立金の不足といった、経済的理由が大きいことがわかります。
「定期報告制度自体よくわからない」「どこに調査を依頼していいのかわからない」という声も多く聞かれ、親身に相談に乗ってくれる相談先の不足や、大勢の人が出入りする建物を購入した所有者本人の責任・知識不足もあるかと思います。
分譲マンションなどは管理組合の理事長が1年交代制などのところもあり、引き継ぎなどの問題が定期報告が進まない理由のひとつかもしれません。
建物の適切な維持管理と施設利用者の安全性
札幌市は公表の理由を「建物の適切な維持管理と施設利用者の安全性」のためと挙げていますが、もちろん第1歩ではあるものの、公表するだけでは解決しないでしょう。
建物は必ず劣化していきますので、新築のビルでもマンションでも、数年経てば徐々に修繕が必要な箇所が出てきます。
定期報告の検査料を捻出できない、もしくは渋っている所有者が、その検査で出てきた修繕箇所を是正する経済力があるとは考えづらいですよね。
定期報告は指摘された危険な箇所を直してこそ意味があります。
また、3年に1度(毎年のところもありますし、建物の検査だけでなく、設備検査などもあります)の検査料がもったいない、と思う所有者の方もいるかもしれません。
しかし逆に言うと、きちんと専門家の検査・報告を受け、どこにいくらくらいの修繕が必要かアドバイスもらうことができれば、「経過観察をしつつ3年後に補修工事が必要」な箇所を慌てて直したり…など突然の支出や、余計な修繕費が防げます。
中長期的な修繕の計画も立てられ、それに必要な積立も計画的に行えるはずです。
そう考えると、検査員は有資格者であればだれでもいいや~とはならないはずです。
建物の劣化状況や所有者・マンション管理組合などの経済事情を踏まえて、親身に相談に乗ってくれる知識と経験のある検査員に依頼するべきだと思いますし、現状そのような検査員は札幌市にそう多くはないはずです。
カネより人命
少し長くなりましたが、定期報告を正しく提出していない所有者・管理者の方々に物申したい!
万が一の時に自分の所有する建物で、自分の管理不足のせいで、誰かがけがをしたり、亡くなってしまったり…と考えてみてください。
ありがちな言葉で申し訳ないのですが、人の命はおカネには代えられません。
今回の「未報告」の中には大勢が利用する商業施設や、お年寄りが生活する福祉施設などの名前もあり、万が一に備え早急に調査・報告が必要です。
今回の公表が社会全体の意識向上につながるきっかけとなり、誰もが安心して暮らしができる地域になるよう、私たち専門家も精一杯努力していきたいと思っています。
広報 成田