特殊建築物等定期調査・建築設備定期検査の北工房 | 特殊建築物の定期調査奮闘Blog in 北海道 成田翔の汗かき定期報告

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京都アニメーション放火事件から学ぶ

7月18日に発生した京都市伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション」の放火事件。

さまざまな情報が出ていて何が正しい情報かわかりませんし、私は現地を確認したわけではないのでひとつも断言できることはありません。

また男が燃焼の早いガソリンを使用したこと、刃物まで持参していたことなどから強い殺意を持っていたとみられ、防災の設備も定期点検もその悪意には敵いません。

ただ、建築や特定建築物の定期調査・建築設備の定期点検に携わっているものとして、記録として見解を少しだけ書き綴っておきます。

 

被害が拡大したのは…

他のメディア等でも多く取り上げられていますが、やはり私も現時点での情報を見る限りでは、建物内に防火のための区画がなかったことが被害が拡大した大きな要因だと思っています。

建物の規模としてはスプリンクラーの設置義務はなかったそうですし、建築基準法としてもロ準耐(準耐火ロ-2)で竪穴区画が不要な場合も考えられるので、防火シャッター・防火扉などの防火設備がなかったことも違法性はなかったと発表されているようで、確かにその通りなんですが…。

今回、犯人の悪意による放火だったことや、「爆燃現象」が起こって逃げる間もなく火災が広がった等々を除いて普通の火災だったと仮定してみても、らせん階段の存在と防火区画がないことで想定以上の火災に発展していたのではないかと思います。

 

らせん階段の存在はどうしようもなかったにせよ、防火設備の設置や大空間をどこかで仕切るなど工夫はできたはず。

今回は、法的に問題ないから大丈夫!ではなかった事例と言えるのではないでしょうか。

京都アニメーション放火事件から学ぶ
▲よくマンションやビルで見る防火扉。

 

消防設備と防火設備は違うんです

特定建築物の定期報告でも、防火設備点検というのがあり、防火シャッターはきちんと稼働するか、閉まる速度は基準通りか(速すぎると避難の際に危険、遅すぎると防火できない)、防火扉の前に荷物が置かれたりしていないか…ときちんと点検し、報告しています。

ちなみによく勘違いされるのですが、スプリンクラーは消防法で定める消火設備で、防火設備は防火扉・防火シャッター・耐火スクリーンなどで建築基準法によって定められています。

半年に1回の消防の点検が~…とたまにビル火災のニュースなどで聞かれますが、あれは消防法の点検であって、重複するところもありますが建築基準法の点検とはまたちょっと違います。

あと火災時に煙を外に出してくれる排煙設備は建築設備なんです。

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▲こちらは耐火スクリーンです。

 

日頃の点検+法定点検

なかなか建築物の点検制度も複雑ですし、防火シャッターの点検などは個人で気軽にできるものではありませんが、特に知識がなくとも防火扉や避難経路に物が置かれていないかなどは確認ができます。

オフィスビルでは避難訓練に積極的に参加をしたり、自宅がマンションなどであれば、住民やお子さんと避難経路の確認など定期的に行うとよいと思います。

そのように普段そこで生活する人の目での防災・防犯に対する意識・点検と、専門家による法的な定期調査・点検を正しく実施することで、非常時に守られる命が間違いなくあります。

 

繰り返しになりますが、今回は明らかな放火ですので悪いのは犯人で、特殊な火災であったことは確かです。

まだ事件から日も浅く、被害者やその家族は今も身体や心の痛みと戦っていると思います。

しかし特定建築物等の定期調査・定期検査も含め、定期的に複数の目で確認することよって防げる火災や事件はあると思います。

私が直接行ってお手伝いすることもできないので…次に悲しむ人が出ないように、ここ札幌で頑張って定期報告と是正についてのアドバイスなどを行っていきます!

(交通費は発生しますが、北海道各地…旭川、函館、北見等々でもお仕事のご依頼をいただいております。伺いますのでご相談ください!)