ブロック塀の定期調査で確認するところ
大阪北部地震でのブロック塀事故
大阪北部地震でブロック塀が倒壊した事故で、当時の大阪市教育委員会やビル管理会社の担当者が書類送検されたという続報が入りました。
毎日新聞より
「市教委担当者ら業務上過失致死容疑で書類送検へ 大阪北部地震でブロック塀倒壊し小4死亡」
ブロックを「打音検査」して何を検査したのかというあたりからすでに教育委員会の検査の意味がわかりませんし、これだけ明らかに危険な状態で定期報告で指摘しなかったビル管理会社も責任は重大です。
3年に1度の特定建築物の定期調査(定期点検)のブロック塀の確認では何が行われているか、少しご紹介します。
特定建築物の定期調査~補強コンクリートブロック造の塀(ブロック塀)の確認~
提出先の行政庁によっても細かい部分は異なるかと思いますが、基本的には目視調査です。
目視によりひび割れ、破損の有無を確認し、水平器などの道具を使用して傾斜の有無も確認します。
あとは設計図書で基礎の寸法や配筋等を把握します。
また、建築基準法施行令の第62条の8の規定に適合しているかどうかを確認します。
建築基準法施行令の第62条の8の規定というのは、ニュースでもよく取り上げられていたのでご存知の方もいるかと思いますが、高さ2.2m以下にしましょうとか、長さ3.4m以下ごとに控え壁を設けましょうとかの基準が書かれたものです。
大阪の小学校では高さが3.5m、控え壁もなかったとのことで、正しい調査が全く行われていなかったことになりますし、教育委員会担当者の打音検査で何の安全が確かめられたのでしょうか…
定期報告で指摘無し=安全ではない
しかし特定建築物の定期報告を行っていたからといって絶対安全なわけではありません。
検査項目としては設計図書で配筋など把握するように指示されていますが、わたしはブロック塀の設計図面というものを見たことがありません。
新築時に大きな塀を建築する場合は別として、たいてい何かの理由であとから塀を作ることになり、業者さんに電話1本でヨロシクね、というパターンが多いかと思います。
また、図面が仮にあったとしても、目視での調査で下の写真のように「塀の中に9mmの鉄筋がきちんと入っています」「基礎コンクリートにも十分に埋め込まれています」とどうやって確認できるのでしょうか…
▲北工房代表の栃木がHBC今日ドキッ!に危険なブロック塀について出演させていただいた時の映像を拝借しました。
北工房ではホームインスペクション(住宅診断)などのサービスも行っており、必要に応じて鉄筋探査機での調査も可能ではありますが、何mmの鉄筋が入っているかや基礎部分はどうなっているかというところまではわかりません。
設計図面があっても、全て設計図通りにミスもなく施工されているという仮定のもとでの報告となるのです。
また、正しく施工されていても、雨水の浸入などが長年繰り返されることによって中の鉄筋が錆びて弱くなっている可能性だってあります。
特定建築物に限らず…
このように、特定建築物の定期報告の調査項目自体にダメ出しする形となりましたが(笑)
それでも大阪北部地震の件ではそもそも目に見えて法に合っておらず、外部から危険だと言われていたのに正しい調査も行われていなかったことが問題で、これが正しい調査・報告・対策(撤去)が行われていれば防げた事故だったかと思うと残念でなりません。
わたしは道内各地で大小さまざまな特定建築物の定期調査・定期検査を行っており、そこではあまりブロック塀自体を見ないのですが、一般住宅ではまだまだ危険なブロック塀はあちこちにある印象です。
▲北工房代表の栃木が昨年6月にHBC今日ドキッ!に危険なブロック塀について出演させていただいた時の映像。
擁壁の上に傾いたブロック塀が…!!
すぐに全ての危険なものを撤去しましょうということはできませんので、「近寄らないようにする」「子どもたちにもそれを伝える」などできることから身を守る行動をしましょう。
とちょっと偉そうに定期報告の制度とか調査方法にもツッコミを入れてしまった成田ですが、お知らせにもある通り、12月28日(土)~1月5日(日)の期間、お休みをいただきます。
お休み中にいただいたお問い合わせにつきましては6日(月)より順次対応させていただきますので、よろしくお願いいたします!
北海道札幌市 特殊建築物等定期調査・建築設備定期検査の北工房
成田翔